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わかる人にはわかるもの

インターネットの普及によって私たちの生活が劇的に良くなったということは言うまでもありません。しかし、ティム・バーナーズ=リー卿がワールドワイドウェブ(www)の驚異的な概念を考案してから今までにもたらされた弊害として、私たちの想像力は削がれ、群衆に従うようになり、個性を忘れてしまうようにもなりました。

「居場所」を見つけたいがゆえに、周りと同じことをする人もいるでしょう。同じ車を運転し、同じ服を来て、同じものを食べ、同じ場所へ旅行し、より多くの人がやっているように見えることを追うことによって、手軽に「流行に乗れている」と錯覚してしまうのです。

しかし現実には、これは想像力の欠如にすぎず、閉ざした心や自己表現の忌避、あるいは未知なるものへの恐怖心の表れと言えるでしょう。つまり、群衆に追従することによって「自分らしさ」を発揮できなくなっているのです。

歴史に影響を与えた人物や、人々の記憶に残っている人物とは、往々にして自らの道を進み、誰も気づかないようなことからインスピレーションを得た人です。

常にインスピレーションを受容し、想像力を働かせようとする姿勢をもつことこそが、それぞれを取り巻く世界を形づくります。それは仕事や生き方だけでなく、自分自身を表現するものであり、ひいてはそれぞれの個性を形成するものになるでしょう。

しかし「個性」を簡単に見つけられることなんて、めったにありません。むしろ、時間をかけて、目利きし、掘り下げて、理解するべく、自分探しの旅が不可欠です。そうすれば必ずと言っていいほど、長く愛せて、最終的には世代を超えて受け継いでいけるような運命の逸品と出会えるはずです。

そのような逸品を見つけるには、まず品質の基準を設定しましょう。品質は、ものの耐用年数や機能を保証するだけでなく、ものとの関係性を築き、確かな愛着を感じさせてくれます。

たとえば、朝のコーヒーを淹れるときのことを思い浮かべてみましょう。よく見るポッド式のコーヒーメーカーは、大きな音や振動によって何百万人もの人々にパブロフの犬さながらの条件反射を起こすことが研究によって示されていますが、果たして使うことによって喜びをもたらすものと言えるでしょうか。また、このような機器は一生使えるものでしょうかか。

ではそのありふれた家電を、たとえばロケット社によるミラノ製のエスプレッソマシンに置き換えてみたらどうなるでしょう。いわゆる「インダストリアルシック」を代表するような、頑丈なステンレス製の完璧に磨き上げられた美しい造形物をとりいれたら、毎朝の習慣は単なるカフェイン摂取のためだけでなく、エスプレッソマシンによってもたらされる素晴らしい体験に様変わりすること間違いありません。

衣服や靴も同様に、どこにでもあるような既製品でクローゼットをいっぱいにするよりは、少々個性を効かせたオーダーメイドを数点だけ持っているほうが良いのです。

「レス・イズ・モア(少ない方が豊かである)」という哲学は、「紳士のアクセサリー」と呼ばれるもののほとんどに対して当てはめることができます。これはたとえば、オノトのような歴史がありながらもあまり知られていない万年筆、スコットランドのハイランド地方にある小さな蒸留所でつくられたスコッチウィスキー(スカイ島のトラベイグ蒸留所のものが特におすすめ)、英国屈指の歴史をもつ刃物店アシュリー・ワトソンのポケットナイフ、ジェイムズ・ジェイ・フォックスにあるレアコレクションの葉巻などのことを指しています。

そして、忘れてはならないのが腕時計です。ありきたりなものを選んでしまいがちな腕時計は、他の何よりも熟慮しないといけません。

しかし、パルミジャーニ・フルリエでそんな心配はいらないでしょう。家宝になりえる品質、精巧な造作、比類なき機能性のすべてを併せもつ「わかる人にはわかる」時計を取り揃えています。

パルミジャーニ・フルリエの時計は、さりげなく差をつけられる時計です。ディナーテーブルにつけば、隣に座った人は時計を一瞥して、ブランドのことは知らなくとも、きっと詳しく知りたくなるでしょう。

ラインナップに共通する哲学は、最もシンプルなモデルである「トンダ PF マイクロローター」(写真)に顕著に現れています。飾りすぎず、かつ完成度が極限まで高められた逸品です。

直径40mmの非常に着けやすい時計でありながら、細部までこだわりぬかれています。

たとえば、スケルトンでも視認しやすいデルタ針の奥には、さりげないギョーシェが施されたグレーの文字盤があり、日付窓も控えめながら実用的です。ベゼルには繊細なローレット加工が施され、その表情と文字盤の質感とが完璧なコントラストを生み出しています。

しかし、これではこの時計の魅力の半分も説明できていないでしょう。というのも、トンダ PFのサファイアクリスタルのケースバックを覗かないと、パルミジャーニ・フルリエの天才的なマイクロエンジニアリングの全貌は見えないからです。たとえば、名前の由来であるマイクロローターは、高密度かつ重量のあるプラチナから削り出されることによって、これほどまでに小さく収まっています。

さらにいえばこの時計は、一般的な自動巻き腕時計のようにムーブメントの上にローターが設置されるのではなく、ムーブメント自体に内蔵されているという独創的な構造になっています。これによって、機構の厚みはわずか3mmに抑えられ、時計全体の厚みも7.8mmとエレガントかつ着け心地のよいものになりました。

「控えめな美しさ」を解する人であれば、きっとこの時計を気に入るでしょう。そして、わが道を行く人であれば、なおさら…。

Alexander Friedman

Watch collector & Luxury consultant

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